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『10月から火災保険規約改定に伴って住宅事業者が知っておくべき大切なこと』

2022年10月に保険各社の個人向け火災保険(住宅総合保険)が改定され、10月からの保険新規加入者に対して適用されます。そこで保全協会では8月30日(火)、『10月から火災保険規約改定に伴って住宅事業者が知っておくべき大切なこと』と題して、改定に伴う変更内容を徹底解説をさせて頂きました。
『10月から火災保険規約改定に伴って住宅事業者が知っておくべき大切なこと』 | 加盟店様の声 | 一般社団法人 日本住宅保全協会

改定の背景

今回の改定は、損害保険料率算出機構による火災保険参考純率の改定を受けたものです。2022年6月16日、損害保険料率算出機構は保険料の目安となる参考純率を全国平均で10.9%引き上げ、引受可能な最長保険期間を5年に短縮すると発表しました。改定の主な理由は2つ、自然災害の増加と築年数の古い住宅の割合が増加傾向にあることです。

大きな改定要素と実務における注意点

住宅業界における大きな改定要素は、次の4点です。

①保険会社の免責事由の明確化
②保険金の使途限定(復旧義務の新設)
③保険金の支払の時期の変更
④悪質業者(特定業者)の認定

①保険会社の免責事由の明確化

免責事由である「経年劣化による損害」「機能の喪失を伴わない損害(非機能的損害)」について、該当する事由の例示(屋根材等の釘浮き、ゆがみ、ずれ等、屋根や外壁の軽微なへこみ、雨樋の機能に影響のないゆがみ、塀の軽微なゆがみ等)が追加されます。

ただし、機能の損失を伴う損害か否かは微妙な判断と伴います。火災保険の適用・非適用はあくまで保険会社が判断するというスタンスはこれまでと変わらないため、被災の可能性があるものについては引き続き保険の申請を行っていくことになります。

例えば、屋根が浮いていることで隙間から雨漏りが生じる可能性があれば機能損失に該当する可能性もあるため、申請をして保険会社の判断を仰ぐことになるだろうと思われます。


また、免責事由が明確化したことで、2022年10月以前の契約に関しても、支給の審査が厳格化することは十分予想されます。

②保険金の使途限定(復旧義務の新設)

今回の改訂で、最も重要なポイントです。従来、保険金の使途については保険契約者等の判断に委ねられていたため、実際には修理しないにも関わらず「保険金は使途を問わないので生活費に充てられる」等の言葉で保険契約者等に保険金請求を促し、高額な手数料を請求する悪徳な業者が急増し、社会問題になっています。

このような業者を排除するため、今回の改訂で、「建物」に関する保険金支払要件として「建物を事故直前の状態に復旧したこと」が追加されました。これにより、保険契約者等は損害が発生した日から起算して2年以内に修繕しなければ保険金支払いを受けることができません。具体的には、保険金請求時に、保険の対象を復旧したことが確認できる書類(復旧箇所の写真等)の提出が必要となります。

ただし例外的に、保険会社が承認した場合は、建物を事故直前の状態に復旧する前に復旧したものとみなし、これまで通り修繕前に保険金が支払われます。
もっとも、この場合であっても、2年以内に修繕が実行されなかった場合は保険会社へ通知しなければならず、保険会社は既に支払った保険金相当額の返還を被保険者に求めることができます。


③保険金の支払の時期の変更

②の改訂に伴い、2022年10月以降に新規契約に関する保険における保険金の支払い時期は、原則として修繕が完了したときとなります(例外は、保険会社が認定した場合)。

10月以前の契約(再契約含む)に関しては従前どおりに運用される可能性が高いですが、保険各社の対応を注視していく必要があるでしょう。

④悪質業者(特定業者)の認定

②の改訂に伴い、保険金支払いの流れが変更されます。改定後は原則として修繕が完了したときに保険金が支払われますが、例外的に保険会社が承認した場合は、従来通り修繕前に保険金が支払われます。この申請に関して、「悪徳業者(特定業者という)が介入している疑義があるか否か」で支払い時期が異なってきます(特定業者か否かはこれまでの請求内容等を踏まえて判断されます)。

例えば、三井住友海上の場合は、次のような流れになります。

1. 特定業者が介入している疑義がない場合
復旧する旨の確約書(保険金請求書に「建物復旧の確約欄」を新設し、チェックマークを入れてもらう等)で復旧意思を確認できれば、復旧前に保険金が支払われます。

2. 特定業者が介入している疑義がある場合
特定業者が介入している疑義があり、かつ復旧意思を確認できない場合は、復旧の事実確認後に保険金が支払われます。

3. 特定業者が介入している疑義がある場合の例外
特定業者が介入している疑義がある場合でも、保険会社が指定する修理業者で修理を行う場合は、復旧意思を確認した上で復旧前に保険金が支払われます。

Q&A

質問①
保険金支払いのタイミングが修繕後となると、修繕費の方が支払われる保険金よりも高くなる可能性があるのでは?

回答:
支払い金額は申請時に、保険会社が損害を査定し、補償の範囲を協定します。協定時に金額は確定するので、後から保険金額が増えることはありません。もし、協定額以上に工事費用がかかってしまった場合には、協定を超える部分については、施工業者とお客様が話し合って進めることになろうと思われます。

質問②
悪質業者の定義があいまいですが、どんな事業者を言うのでしょうか?

回答:
「実際には修理をしないにもかかわらず、被保険者に修理をそそのかし、高額な手数料を請求する悪質な業者」と定義されています。悪質な業者がどうかの判断は、過去の請求履歴や過剰請求などをAI等で分析して保険会社が行いますが、実際に修理工事をすれば悪質な業者とは認定されないでしょう。一度特定業者であると認定されると、そこから脱出するのは困難になると思われますので、保険会社に特定業者と認定されないことが重要です

質問③
「機能の喪失を伴わない損害」の線引きは?

回答:
「機能の喪失を伴わない損害」とは釘浮き、ゆがみ、ズレなどです。ただし、これらにより雨漏りが生じる可能性や屋根本来の機能が失われるおそれがあれば、自然災害による損害として支払いの対象になる可能性はあります。

質問④
保険金が支払われたが、どうしても工事をしたくないとお客様が主張した場合は、施工事業者としてはどう対応すべきでしょうか?

回答:
原則通り、工事後に保険金が支払われる場合は問題ありませんが、例外的に保険会社が保険金を工事前に支払われた場合はこうしたケースが問題になりえます

施工事業者としては、「保険金を受け取ったら修繕義務(原状回復義務)が発生するので、工事しないと保険会社から保険金の返還請求がされてしまいますよ」とお客様に伝えて工事を促すことになると思います。

質問⑤
大手保険会社の間では全て同じ内容の改定なのでしょうか?

回答:
三井住友海上と損保ジャパンでは、ほぼ同じ改訂になっています。AIGに関しては原状回復義務の規定がなかったので、国内損保会社と外資系とで若干の差異や運用の違いはあるかと思います。国内民間損保は金融庁が管轄しているので、およそ横並びになるのではないでしょうか。共済は監督官庁が農水省と異なるため、今後どのような動きになるかはまだわかりません。

質問⑥ 
保険会社が支払いを事前に承認する例外的なケースとはどういう場合なのでしょうか?

回答:
保険会社は、大きく分けて2パターンを念頭に置いていると思います。1つ目は、特定業者の介入のおそれがない場合です。この場合は、被保険者に復旧する旨の確約を取った上で事前支払いをします。

2つ目は、特定業者が介入している可能性がある場合です。この場合は、保険会社が必要な復旧の範囲で調査をし、保険会社が指定する業者で補修を行うのであれば、復旧前に保険金を支払います(指定業者の認定は保険会社の判断に委ねられています)。


質問⑦ 
お客様にはどんな案内がなされると予測できますか?

回答:
事前承認の場合は、査定の段階で「この業者ではお支払いできません(=その業者は特定業者です)」というというアナウンスが届くと思われます。

この記事を書いた人

一般社団法人日本住宅保全協会
理事 深川真樹

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1977年8月生まれ。
東京都杉並区出身。
2010年に一般社団法人日本住宅保全協会を創設し、今日までに全国300社以上の住宅リフォーム系事業者及び不動産管理会社への営業研修を務める。全国の住宅診断数も延べ2,500件以上。
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